「弁護士に頼みたくても、費用を用意できる状況じゃない」——そう感じている方は少なくありません。毎月の返済でいっぱいいっぱいの状態で、まとまったお金を先に用意するのは、確かに難しいことです。
ところが、手元に費用がゼロの状態でも、債務整理を始める方法はあります。むしろ、費用を用意しようとして動けないでいる間も、利息は積み上がり続けます。早く動くほど、返済総額を抑えられる可能性があります。
この記事では、費用が払えない状況でも使える3つの方法と、法テラスの立替制度の正確な仕組みを順番に説明します。
費用が用意できなくても始められる3つの方法
費用の問題を解決する方法は、主に以下の3つです。
| 方法 | 仕組み | 向いている方 |
|---|---|---|
| 分割払い対応の事務所 | 着手金を月々に分けて支払う | ある程度の収入がある方 |
| 法テラスの民事法律扶助(立替制度) | 費用を立て替えてもらい、後から無利子で返済 | 収入・資産が一定以下の方 |
| 着手金0円の事務所 | 解決後にまとめて支払う成功報酬型 | 過払い金返還が見込める方など |
以下では、それぞれの仕組みと注意点を詳しく説明します。費用の目安については債務整理の費用の相場もあわせてご覧ください。
分割払いで始める——受任通知が出た日から督促が止まります
債務整理専門の弁護士・司法書士事務所の多くは、着手金の分割払いに対応しています。月3万円前後から始められる事務所もあり、まとまった初期費用がなくても依頼できる場合があります。
分割払いのしくみを順番に説明します。
- 事務所に依頼の意思を伝え、契約を結びます
- 事務所から各債権者(貸金業者)へ受任通知が送付されます
- 受任通知が届いた時点で、貸金業者からの取り立て・督促が止まります
- それまでの毎月の返済も一時的に止まります(交渉中は待ってもらう状態になります)
- 止まった返済分を弁護士費用として毎月積み立てていきます
- 費用が一定額に達したら、交渉・手続きを開始します
受任通知が送付されると、貸金業者は貸金業法の規定により取り立てを続けることができなくなります。つまり、弁護士費用の積立期間中も、電話や郵便での催促に悩まされることはありません。
費用の種類別の目安を示します(事務所・ケースによって大きく異なります)。
| 手続きの種類 | 総費用の目安 | 月払い例(12回の場合) |
|---|---|---|
| 任意整理(3社) | 15〜30万円程度 | 1.5〜2.5万円程度 |
| 個人再生 | 40〜70万円程度 | 3〜6万円程度 |
| 自己破産 | 30〜60万円程度 | 2.5〜5万円程度 |
あくまでも目安です。事務所ごとに費用体系が異なりますので、複数の事務所の無料相談で見積もりを確認されることをおすすめします。
事務所を選ぶ際は、次の点を確認しておくと安心です。
- 分割払いの回数が多いほど(12回・24回など)月々の負担が軽くなります
- 分割払いに利息や手数料が発生しない事務所かどうかを確認してください
- 支払いが難しくなった場合に相談・猶予に応じてもらえるかも聞いておくと安心です
弁護士と司法書士の違いや費用感については債務整理を司法書士と弁護士どちらに頼むかの記事もご参照ください。なお、司法書士は認定を受けた場合でも1社あたり借金140万円以下の案件のみ代理が可能です。それを超える場合は弁護士への依頼が必要になります。
法テラスの民事法律扶助——収入要件を満たせば無利子で立替が受けられます
法テラス(日本司法支援センター)は、国が設立した法的支援の機関です。収入や資産が一定以下の方を対象に、弁護士費用を一時的に立て替える「民事法律扶助」という制度があります。
利用後は法テラスに分割で返済しますが、利息はかかりません。月5,000円〜1万円程度から返済を始められる場合が多く、生活への負担を抑えながら手続きを進められる可能性があります。
収入の目安(手取り月収)
法テラスの収入基準(目安)を示します。実際の審査では資産の状況なども考慮されますので、以下はあくまでも参考値です。
| 家族構成 | 月収の目安(手取り) |
|---|---|
| 単身 | 約20万2,000円以下 |
| 夫婦2人 | 約27万6,000円以下 |
| 夫婦+子1人 | 約30万9,000円以下 |
| 夫婦+子2人 | 約34万2,000円以下 |
収入が上記を超える方でも、住宅ローンや医療費などの出費がある場合は基準が緩和されることがあります。資産についても預貯金などが一定額以下であることが求められます。正確な条件は法テラスのサポートダイヤル(0120-078374)か、近くの法テラス事務所に問い合わせるのが確実です。
利用の流れ
- 法テラスのサポートダイヤルまたは最寄りの事務所に連絡します
- 収入・資産の状況を申告し、審査を受けます(審査に数週間かかる場合があります)
- 審査を通過すると、法テラスと契約している弁護士を紹介してもらえます
- その弁護士に依頼して手続きを開始します(費用は法テラスが立替)
- 手続き完了後から、法テラスへの分割返済が始まります
利用前に知っておきたい点
法テラスの制度にはいくつかの特徴があります。事前に把握しておくと、利用後に「思っていたのと違う」と感じにくくなります。
- 担当弁護士を自分で選ぶことは基本的にできません。法テラスと契約している弁護士の中から紹介される形になります。ただし、既にご自身で相談している弁護士が法テラスと契約していれば、その方に引き続き担当してもらえるケースもあります。
- 審査に時間がかかる場合があります。督促が激しい・裁判を起こされているなど急を要する状況では、先に弁護士に相談して受任通知を出してもらい、その後で法テラスへの切り替えを検討する方が合う場合もあります。
- 生活保護を受給中の方は扱いが異なります。受給中の方は費用の立替ではなく、免除(返済不要)が認められるケースがあります。詳しくは法テラスに直接確認してください。
法テラスを使うかどうかにかかわらず、まずは無料相談で事務所に状況を話し、どの方法が合うかを一緒に検討してもらうことをおすすめします。自分のケースに合った手続きの種類については債務整理の4種類の違いもご参照ください。
着手金0円の事務所——過払い金がある場合は特に有効です
「着手金無料・成功報酬型」を掲げる事務所も存在します。ただし、すべてのケースで利用できるわけではありません。どういう場合に向いているかを確認しておきましょう。
着手金0円が成立しやすいケースは主に次のとおりです。
- 過払い金の返還請求——回収した金額から報酬が発生するため、初期費用なしで依頼できる事務所があります。過払い金は主に2010年頃以前から借り入れがある方に発生しうるものです。時効(最後の取引から原則10年)もありますので、心当たりのある方は早めに確認することをおすすめします。
- 比較的シンプルな任意整理——事務所によっては、成功報酬型で対応しているケースがあります。
利用前に確認しておきたい点を下表にまとめます。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 成功報酬の計算方法 | 着手金がない分、成功報酬が高めに設定されていないか確認します |
| 「成功」の定義 | 交渉の一部がまとまっただけでも報酬が発生しないかを確認します |
| 後から発生する費用の有無 | 書類作成費・通信費などが別途かかるケースがあります |
費用の総額を複数の事務所で比較することが、結果として出費を抑えることにつながります。債務整理のおすすめ事務所の比較もあわせてご確認ください。
受任通知が届いた後——返済は止まり費用を積み立てやすくなります
分割払いを選んだ場合も、法テラス経由の場合も、弁護士から債権者へ受任通知が送付された時点で、貸金業者からの取り立て・督促は止まります。
これは、貸金業法(第21条)で定められたルールです。受任した旨の通知が届いた後も督促を続けることは、貸金業者には法律上認められていません。
督促が止まると、毎月の返済が一時的にストップします。その間に弁護士費用を積み立てていける状態になりますので、費用の工面と借金返済が同時進行になることはありません。取り立てや督促が止まるしくみについては取り立て停止の仕組みと注意点で詳しく説明しています。
「費用が払えない→相談できない」という状況のまま動かずにいると、利息や遅延損害金が積み上がり続けます。まずは無料相談だけでも利用して、どの方法が自分のケースに合うかを専門家に確認してもらうことが、解決への一歩になります。
自分のケースでどの手続きが向いているか、費用の見積もりがどれくらいかは、事案によって異なります。複数の事務所で無料相談を受け、比較してから判断するのが安心です。
信用情報への影響についても確認しておきましょう
費用の問題と並んで気になるのが、信用情報(いわゆるブラックリスト)への影響ではないでしょうか。
債務整理を行うと、信用情報機関に事故情報が登録されます。その期間は手続きの種類や信用情報機関によって異なりますが、概ね5年程度が目安です(一生残るわけではありません)。その期間は新たなローンやクレジットカードの審査が難しくなる場合があります。
登録期間が過ぎれば情報は削除され、その後は通常通り審査を受けることができます。詳しくは債務整理とブラックリストの期間・影響をご覧ください。
よくある質問
- Q. 受任通知を送ってもらった後、費用の積立ができなくなった場合はどうすればよいですか?
- 早めに担当の弁護士・司法書士に相談してください。事情によっては支払いの猶予に応じてもらえるケースや、法テラスへの切り替えを提案してもらえるケースがあります。連絡なしに放置してしまうと解任になる可能性がありますので、困ったらすぐに連絡することが大切です。
- Q. 法テラスの民事法律扶助を利用すると、担当弁護士は自分で選べますか?
- 基本的には、法テラスと契約している弁護士の中から紹介される形になります。希望の弁護士を指定することは通常できません。ただし、既にご自身で相談している弁護士が法テラスと契約していれば、その弁護士に引き続き担当してもらえる場合があります。詳しくは法テラスに確認してください。
- Q. 法テラスを通じて依頼すると、弁護士のサービスの質は変わりますか?
- 弁護士には依頼者に対して誠実に職務を行う義務があります。費用が法テラス経由であるかどうかによってサービスの水準が変わることは法律上ありません。
- Q. 生活保護を受給中でも債務整理はできますか?
- できます。生活保護受給中は法テラスの「立替」ではなく費用の「免除」(返済不要)が認められるケースがあります。自己破産の場合、裁判所費用についても免除申請が認められることがあります。詳しくは法テラスに直接お問い合わせください。
- Q. 費用を工面している間も、督促の電話は続きますか?
- 弁護士から受任通知が送付された時点で、貸金業者からの督促・取り立ては止まります。事務所への依頼を決めたタイミングで受任通知を送ってもらえますので、費用の積立中も督促に悩まされることはありません。
- Q. 「弁護士費用が払えないから相談できない」は正しいですか?
- 正しくありません。無料相談は費用ゼロで利用でき、法テラスや分割払い対応の事務所であれば手元にお金がない状態でも手続きを始められる場合があります。まず相談してから費用の工面方法を決める、という順序が現実的です。
まとめ
「債務整理をしたいけれど費用を用意できない」という状況でも、動ける方法は複数あります。
- 分割払い対応の事務所——受任通知が届いた時点で督促が止まり、止まった返済分を費用として積み立てていく流れになります。月々の負担を抑えながら進められる可能性があります。
- 法テラスの民事法律扶助(立替制度)——収入・資産が一定以下の方が対象です。弁護士費用を法テラスが立て替え、後から無利子で分割返済します。担当弁護士の選択に制約がある点と、審査に時間がかかる場合がある点を事前に把握しておいてください。
- 着手金0円・成功報酬型の事務所——過払い金返還が見込める場合などに有効です。成功報酬の計算方法や「成功」の定義は事前に確認してください。
動けない間も利息は積み上がり続けます。まずは無料相談だけでも利用して、自分のケースにどの方法が合うかを専門家に確認してもらうことが、解決への一歩です。どの手続きが自分の状況に合うかは債務整理の種類の比較もあわせてご参照ください。
関連記事
- 債務整理の費用はいくら?種類別の相場と払えない場合の対処法
- 取り立て・督促を止める方法|債務整理の受任通知の効果と注意点
- 債務整理の種類は4つ|それぞれの特徴・条件・費用を比較
- 債務整理するとブラックリストに載る?期間・影響・回復方法を解説
- 任意整理とは?費用・デメリット・流れを初心者向けに解説
- 過払い金請求の仕組みと相場|時効・対象期間・実際の返還額
- 債務整理おすすめの法律事務所10選|費用・実績で比較