「任意整理と個人再生、どちらが自分に合っているのか分からない」——そう感じている方は多いと思います。
どちらも借金を減らして返済を続ける方法ですが、減り方・手続きの重さ・費用・選べる条件が大きく違います。どちらを選ぶかで、毎月の返済額も手続き期間も変わってくるため、違いを正確に知っておくことが大切です。
この記事では、両者の違いを比較表と具体的な数字で整理し、「自分のケースではどちらが向いているか」を考えるための判断軸をご説明します。
なお、債務整理の手法が4種類あることや、費用の全体像は債務整理の種類と特徴に整理していますので、あわせてご覧ください。
一目でわかる比較表
まず大枠を掴んでいただくために、主な違いをまとめます。
| 項目 | 任意整理 | 個人再生 |
|---|---|---|
| 借金の減り方 | 将来利息をカット(元金は原則そのまま) | 元金を最大90%程度圧縮できる場合がある |
| 裁判所の関与 | なし(弁護士・司法書士が直接交渉) | あり(裁判所への申立が必要) |
| 対象にできる借金 | 選べる(保証人がいる借金を外すことも可能) | 原則すべての借金が対象 |
| 手続きにかかる期間の目安 | 3〜6ヶ月程度 | 6ヶ月〜1年程度 |
| 弁護士費用の目安 | 1社あたり3〜5万円程度 | 30〜55万円程度 |
| 自宅・住宅ローン | 対象から外せば維持できる場合がある | 住宅ローン特則を利用すれば自宅を守れる場合がある |
| 保証人への影響 | 対象から外せば保証人への請求を避けられる | 全債権が対象になるため保証人に影響が出る可能性がある |
| 信用情報への記録 | 概ね5年程度(信用情報機関により異なる) | 概ね5〜10年程度(機関・手続きにより異なる) |
| 収入の条件 | 安定した収入があること | 継続的な収入の見込みがあること |
任意整理とは何か——基本のしくみ
任意整理は、弁護士や認定司法書士が貸金業者と直接交渉し、将来発生する利息をカットしてもらい、元金を原則として分割返済する手続きです。裁判所を通さないため手続きがシンプルで、期間も比較的短い傾向があります。
最大の特徴は「対象にする債権者を自分で選べる」点です。保証人を立てている借金や、住宅ローン・車のローンを対象から外したまま、消費者金融だけを整理することも可能です。
ただし、元金は原則としてそのまま残ります。借金の総額が多い場合、利息をカットするだけでは毎月の返済額が依然として重くなることがあり、その場合は個人再生や自己破産の方が向いているケースもあります。
任意整理の費用・流れ・向いている人の詳細は任意整理とは?費用・デメリット・流れにまとめています。
個人再生とは何か——基本のしくみ
個人再生は、裁判所に申立をおこない、借金の元金そのものを大幅に圧縮して、圧縮後の金額を原則3〜5年かけて返済する手続きです。圧縮幅が大きいぶん、任意整理では返しきれないほどの借金がある方にとって有力な選択肢になります。
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類がありますが、会社員の方が利用されることが多いのは給与所得者等再生です。いずれも安定した収入の見込みがあることが申立の要件のひとつになっています。
最低弁済額のしくみ(正確に理解しておきたい点)
個人再生では、借金を圧縮したあとに「最低限いくら返すか」が民事再生法によって定められています。これを「最低弁済額」と呼びます。
| 借金の総額 | 最低弁済額の目安 |
|---|---|
| 100万円未満 | 全額 |
| 100万円以上500万円未満 | 100万円 |
| 500万円以上1,500万円未満 | 借金総額の5分の1 |
| 1,500万円以上3,000万円未満 | 300万円 |
| 3,000万円以上5,000万円以下 | 借金総額の10分の1 |
ただし、これはあくまで「最低ライン」です。実際に返す金額は、清算価値保障原則(手持ち財産の合計を下回らないこと)や、給与所得者等再生の場合は「可処分所得の2年分」との比較で、最も高い金額が採用されます。具体的な金額は事案によって異なるため、正確な試算は弁護士に相談するのが確実です。
たとえば、借金総額800万円の場合、最低弁済額の基準だけで見ると800万円÷5=160万円になります。これを3年間で返すなら月々の返済は約4万4,000円の計算です(あくまで目安であり、清算価値や可処分所得次第で変わります)。
任意整理が向いているケース
次のいずれかに当てはまる場合、任意整理が選択肢に入ることが多いです。
借金の総額が比較的少なく、利息カットで返せる見通しがある
任意整理は元金を圧縮しないため、現在の借金総額を3〜5年程度で返せる収入があることが前提です。ひとつの目安として、月々の返済可能額×36ヶ月(3年)が借金総額を上回るかどうかで考えてみてください。
たとえば、消費者金融3社から合計150万円の借金がある場合、将来利息がカットされれば元金150万円を36回払いにでき、毎月の返済は約4万2,000円になる計算です(弁護士費用は別途)。実際の返済額は交渉の結果によって異なります。
保証人がいる借金がある
任意整理は「対象にする借金を選べる」ため、保証人を立てている借金を対象から外すことができます。個人再生では原則としてすべての借金が対象になるため、保証人に請求が行く可能性があります。保証人への影響を最小限にしたい場合は、任意整理の方が向いているといえます。
裁判所手続きを避けたい・手続きをシンプルに済ませたい
任意整理は裁判所を通さないため、官報への掲載もなく、手続き全体が比較的シンプルです。個人再生は裁判所への申立・書類提出・個人再生委員との面談など、進める手順が多い傾向があります。
個人再生が向いているケース
以下のようなケースでは、個人再生の方が合っている可能性があります。
借金が多く、任意整理(利息カット)だけでは返済の見通しが立たない
たとえば借金総額が500万円以上あり、月々返済できる金額を超えてしまう場合、利息をカットするだけでは解決しないことがあります。個人再生では元金そのものを圧縮できるため、返済額を大きく下げられる可能性があります。
借金500万円のケースで任意整理・個人再生を比較した詳細は借金500万円のシミュレーションもご参照ください。
住宅ローンが残っており、自宅を手放したくない
個人再生には「住宅ローン特則」という制度があります。住宅ローンだけは従来通り返済を続けながら、それ以外の借金を圧縮する仕組みです。自己破産では自宅を手放す必要が生じることが多いため、自宅を守りたい方には個人再生が有力な選択肢になります。
住宅ローン特則を利用するには、主に以下の条件を満たす必要があります。
- 自分が居住する住宅であること(賃貸・別荘・事業用は対象外)
- 住宅ローンの担保が自宅にかかっていること
- 住宅ローン以外の債務を整理することが目的であること
なお、住宅ローンをすでに数ヶ月滞納している場合は、期限の利益を喪失して一括返済を求められる状態になっていることがあります。その場合は特則の利用が難しくなることもあるため、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。
自己破産は避けたいが、任意整理では解決しきれない
任意整理では月々の返済が重すぎて生活が立ち行かず、かといって自己破産はどうしても避けたい——そういった場合に、個人再生が中間の選択肢として検討されることがあります。自己破産との違いについては自己破産すると何を失う?で詳しくまとめています。
住宅ローンがある場合の比較
住宅ローンが残っている方が債務整理を検討する際は、手法によって結果が大きく変わります。
| 手法 | 自宅への影響 |
|---|---|
| 任意整理 | 住宅ローンを対象から外せば、従来通り返済を続けながら自宅を維持できる場合がある |
| 個人再生(住宅ローン特則あり) | 住宅ローンは続けながら、その他の借金を圧縮。自宅を守れる可能性がある |
| 個人再生(住宅ローン特則なし) | 住宅ローンも圧縮対象になり、競売になる可能性がある |
| 自己破産 | 自宅は原則として手放すことになる |
債務整理後の住宅ローンへの影響については債務整理後の住宅ローン審査も参考にしてください。
費用の比較
費用の目安を整理します。事務所によって異なるため、あくまで参考値としてご覧ください。
弁護士・司法書士費用の目安
| 費用の種類 | 任意整理(3社の場合の目安) | 個人再生 |
|---|---|---|
| 着手金 | 9〜15万円(1社3〜5万円) | 20〜40万円程度 |
| 報酬金 | 6〜9万円(1社2〜3万円) | 10〜15万円程度 |
| 合計目安 | 15〜30万円程度 | 30〜55万円程度 |
裁判所費用
| 費用の種類 | 任意整理 | 個人再生 |
|---|---|---|
| 申立費用(収入印紙・切手等) | なし | 数千円程度 |
| 予納金 | なし | 2〜3万円程度 |
| 個人再生委員費用(裁判所による) | なし | 15〜25万円程度 |
個人再生では、弁護士費用と裁判所費用を合わせて50〜85万円程度かかることが多いです。任意整理より費用は高くなりますが、借金の圧縮幅が大きいため、借金総額が多い場合はトータルで見て合理的な選択になることもあります。費用が用意できない場合の対処法については債務整理の費用が払えない場合の対処法をご参照ください。
信用情報への記録について
どちらの手続きをおこなっても、信用情報機関に事故情報として記録されます。記録されている期間は、クレジットカードの新規作成や新たな借入が難しくなることが一般的です。
記録期間は信用情報機関や手続きの種類によって異なりますが、概ね5年〜10年程度とされています。「一生ブラックリストに載る」という情報は誤りです。時間の経過とともに記録は抹消され、その後は通常通り審査を受けられるようになります。
信用情報への影響の詳細は債務整理するとブラックリストに載る?でまとめています。また、債務整理後にカードを使いたい方は債務整理後に使えるクレジットカードはある?も参考にしてください。
どちらを選ぶか迷ったときは
任意整理か個人再生かを選ぶ際に判断の軸になるのは、主に次の3点です。
- 借金の総額——元金を利息カットだけで返せるか、圧縮が必要かどうか
- 自宅と住宅ローン——住宅ローン特則を使う必要があるかどうか
- 保証人への影響——保証人を立てている借金を外したいかどうか
「自分のケースではどちらが向いているか」は、借金の総額・収入・財産の状況・債権者の数などによって変わります。自分だけで判断するのが難しい場合は、まず複数の法律事務所に無料相談して比較してみるのが安心です。相談するだけで方針が決まることも多く、費用の見積もりも事務所ごとに異なるため、比べることに意味があります。
事務所選びに迷う場合は債務整理おすすめの法律事務所も参考にしてみてください。
よくある質問
途中で任意整理から個人再生に切り替えることはできますか?
切り替えること自体は可能です。任意整理を進めてみたものの、交渉がまとまらない・返済計画が成立しないといった場合に、個人再生へ移行するケースは珍しくありません。ただし手続きはやり直しになるため、担当の弁護士に早めに相談されることをおすすめします。
個人再生の手続き中に収入が減ってしまった場合はどうなりますか?
返済計画の変更(延長や金額の見直し)を裁判所に申請できることがあります。ただし、継続的な収入が見込めなくなった場合は、自己破産への移行を検討することになる場合もあります。収入に変化が生じたら、早めに担当の弁護士に相談してください。
個人再生をすると会社にバレてしまいますか?
手続き上、勤務先への通知はありません。ただし、個人再生は官報に掲載されます。実際に同僚や上司が官報を確認するケースはまれですが、可能性がゼロではないことは念頭に置いておくとよいでしょう。家族への影響が気になる方は家族にバレずに債務整理する方法もご覧ください。
任意整理で対象にしなかったクレジットカードはそのまま使えますか?
任意整理の対象にしなかった借金やカードは、通常通り使い続けられます。ただし、信用情報に事故情報が記録されることで、更新のタイミングでカードが使えなくなる可能性があります。これは対象にしたかどうかに関わらず起こりうるため、あらかじめ理解しておくとよいでしょう。
複数の借金があるとき、一部だけ任意整理することはできますか?
できます。任意整理は対象にする債権者を自分で選べます。たとえば住宅ローンや車のローンはそのまま続けて、消費者金融2〜3社だけを対象にするといった選択も可能です。弁護士・司法書士と相談しながら、どの借金を対象にするかを決めていきます。
まとめ
任意整理と個人再生の違いを整理します。
- 任意整理が向いているのは——借金総額が比較的少なく利息カットで返せる見通しがある、保証人がいる借金を対象から外したい、裁判所手続きを避けたい方
- 個人再生が向いているのは——借金が多く任意整理では返済の見通しが立たない、住宅ローン特則を使って自宅を守りたい、自己破産は避けたい方
どちらも「安定した収入が続くこと」が前提条件です。借金を減らしながら生活を立て直すという目的は同じなので、自分の状況(借金総額・収入・財産・保証人の有無)を整理した上で、弁護士や司法書士に相談して最適な方法を選んでいただくことをおすすめします。
債務整理の手法全体を比較したい方は債務整理の種類は4つを、任意整理の詳細を知りたい方は任意整理とは?費用・デメリット・流れを参考にしてください。
関連記事
- 債務整理の種類は4つ|それぞれの特徴・条件・費用を比較
- 任意整理とは?費用・デメリット・流れを初心者向けに解説
- 債務整理の費用はいくら?種類別の相場と払えない場合の対処法
- 借金500万円のシミュレーション|任意整理と個人再生どちらを選ぶべきか
- 債務整理するとブラックリストに載る?期間・影響・回復方法を解説
- 自己破産すると何を失う?家・車・財産の扱いを徹底解説
- 債務整理おすすめの法律事務所10選|費用・実績で比較